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#ref(shigeface.gif,around,right); ナノメートル(1nmは10^^-9^^m)の世界で物質の構造を制御して、 目的とする機能を実現したり、全く新しい機能を持つ材料や素子を 生み出す試みが盛んです。 ナノスケールでの科学技術の進展は、異なる分野の間の垣根を取り去り、 分野間の融合や新分野の構築を可能にするものと期待されますが、実際、 これまでの歴史を振り返れば明らかなように、新しい実験技術の開拓と 科学の展開は表裏一体で織りなされてきました。既存の装置を組み合わ せてデータをとり解析することは、重要ではありますが、研究の一部で しかありません。 新たな実験技術を開発することがいかに重要であるかは、過去の重要な 研究を見れば明らかです。 走査プローブ顕微鏡(SPM)は、非常に鋭い探針を試料表面に近づけて、 探針の直下の試料の情報を得ることが可能な装置です。トンネル電流を 測定して電子状態を調べたり、探針と試料の力学的な相互作用を測定し たりできます。 圧電素子を用いて、探針の位置を精密に制御することにより、こうした 情報を場所の関数としてマッピングすることが可能で、今後も、ナノス ケールの科学技術を展開する上で、重要な役割を担うことは確かです。 しかし、通常、測定の際のパラメータは、探針・試料間の距離や探針・ 試料間に印加するバイアス電圧に過ぎず、試料の、より詳細な情報や 過渡応答を調べるためには外部から新たに摂動を加えて応答を見ることが 必要になりますが、それには解決せねばならない多くの課題があります。 ナノスケールの科学技術を展開するためには、個々の要素となる単一素子 を、それら内部の局所構造まで分解して、極限領域で解析・制御を行うこ とが必要であり、こうした極限計測が可能な装置・手法開発のブレークス ルーが必要不可欠です。 我々のグループでは、走査プローブ顕微鏡(SPM)技術を核として、 量子光学など異なる分野の先端技術を融合させることによって、極限 レベルでの新しい測定技術の開発を進めるとともに、これら技術を用 いることで新しい科学の展開を可能にすることを目指し研究を進めています。 例えば、光は、我々にとって、古くから馴染みの深い観察・計測手法 であり、構造や反応過程を解析・制御したり、物理的な情報を得るため に広く利用されてきました。技術の進歩により、今日では、モノサイク ル領域の時間分解能を達成するまでに発展していますが、空間分解能は 一般に波長により制限を受けます。そこで、こうした極限的な時間分解 能を持つ光源を原子レベルの空間分解能を持つSPMに組み合わせれば、時 空両領域で極限の分解能を持つ計測手段が生まれ、これまでにない精度で 局在した光誘起応答の世界をのぞき見ることが可能になります。また、 励起光とプローブの組み合わせにより、新しい可能性を秘めた加工・制御 技術の展開も期待されます。 これら技術を用いることにより、ナノスケール、単一分子レベルでの 物性研究、新物質探索、新規機能素子開発を展開することになりますが、 各種プローブ顕微鏡の特性を活かすことにより、対象は、半導体、金属、 生体機能材料を含む有機材料、また、これら材料を組み合わせた新しい 材料と、様々な、幅広い分野にまたがることが可能です。 最近の研究により、実際、こうした試みが実現され、新たな世界が開 かれています。
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