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走査プローブ顕微鏡
(Scanning Probe Microscope)

■ 走査プローブ顕微鏡

走査プローブ顕微鏡(SPM: Scanning Pobe Microscope)とは、非常に高い空間分解能を持つ一連の顕微鏡を表す言葉です。例えばSPMの代表格である走査トンネル顕微鏡(STM : Scanning Tunneling Microscope)を用いれば、原子の1つ1つをはっきりと見分けることが可能です。重川研究室では、STM と、これまたSPMの一種である原子間力顕微鏡(AFM : Atomic Force Microscope)とを用いて、ナノスケールの物性研究を行っています。

■ 仕組み

SPM は、通常の光学顕微鏡や電子顕微鏡などとは大きく異なる方法で試料の表面を観察します。すなわち、試料の局所物性を測ることのできるナノ・プローブを、試料表面に沿って高精度に動かしながら測定を繰り返すことで、試料の物理パラメータをプローブ位置の関数として求め、結果を画像として出力するのです。


プローブ顕微鏡の原理

STM では電解研磨等の方法で先端を鋭く尖らせた針(=探針)を、試料のごく近く(∼1nm)まで近づけ、探針・試料間をトンネルする電子が運ぶ電流(トンネル電流)をプローブ信号として用います。AFM では探針・試料間に働く原子レベルの相互作用(原子間力)をプローブ信号として用います。そのほかに、先端を尖らせた光ファイバーなどをプローブとして、近接場光を測定する走査型近接場顕微鏡(SNOM : Scanning Nearfield Optical Microscope) なども有名です。

トンネル電流や原子間力は、試料・探針間の距離に非常に敏感なので、プローブを試料表面に平行に動かしつつプローブ信号を記録すると、試料の凹凸にしたがってプローブ信号が変化するため、試料の凹凸を画像化することができます(高さ一定測定モード)。また、逆にプローブ信号が一定になるようにプローブ高さを調節しながらスキャンすれば、プローブの動いた軌跡がそのまま一定の信号値を与える面となるため、より正確に表面形状を得ることができます(信号一定測定モード


高さ一定モード
     
信号一定モード

下の図は、Si(001) 表面を STM の信号一定モードで観察したもので、それぞれの画像が 25nm x 25nm の領域を表しています。図の明暗は表面の凹凸を表し、明るいところほど出っ張っていることになります。ここでは個々の出っ張りが1つ1つの原子に対応しているので、表面上で原子が規則的に配列していること、その周期構造が温度と共に変化していること、が見て取れます。


Si(001) 表面低温観察例

■ さまざまな応用

SPM を用いると凹凸情報以外にも試料表面のさまざまな物性を測定することができます。例えば、STM により測定されるトンネル電流は、厳密には試料・探針距離だけではなく、探針先端位置での試料の電子状態密度に比例することが知られていて、さらに、試料・探針間に掛ける電圧によって測定にかかる準位のエネルギーを選択できます。したがって、測定条件をうまく選べば、表面上のどこに、どんなエネルギーを持った電子状態が局在しているかを、原子スケールで可視化することが可能です。このような手法は、走査トンネル顕微鏡を使った分光という意味で、走査トンネル分光法(STS : Scanning Tunneling Spectroscopy) と呼ばれます。

また、AFM であれば、探針試料間に働く力を詳細に解析することで、ナノスケールでの吸着力、摩擦力を測定できるほか、探針試料間にバイアス電圧を加えることで表面電位や、半導体試料表面に形成される空乏層幅といった電気的性質を、やはりナノメートルの空間分解能で得ることが行われています。

■ 私たちは

私たち重川研究室は、SPM の更なる可能性を模索し、また、最先端の SPM 技術を物性研究に応用することで、ナノテクノロジーの発展に貢献しています。