線形写像・像・核・階数 の履歴(No.1)
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写像†
が集合 から集合 への写像であることを、
と書く。
このような は、 の元それぞれに対して1つずつ、 の元を対応させる規則のことである
「1つずつ」が重要
- 対応する元が
の外に出てしまうようなら
の写像とは呼ばない
- 対応する元が2つ以上あれば写像とは呼ばない
- 異なる元
に対して、同じ
が対応するのは問題ない
- 対応する
の元がない
の元が存在するのも問題ない
線形写像†
を線形空間として、 が次の条件を満たすとき、 は「線形である」と言うのであった。
すなわち、写像がベクトル和やスカラー倍に対して透過的であると言うこと。
あるいは、 として、
のように括弧を省略して書くこともよく行われる。
注)
左辺の和やスカラー倍が
で定義された演算であるのに対して、
右辺の和やスカラー倍は
で定義された演算であることに注意せよ。
(すなわち
と
は同じスカラーの上に定義されている必要がある)
例:
、
として、
を
と定義すれば、これは線形写像になる。
(関数線形空間に対して微分や積分を線形写像と考えるのはこれから非常に良く出てくる考え方)
このため だけでなく という書き方も良くする。
例:
上の、
も線形写像になっている。
練習†
問: が線形写像であれば、 となることを示せ。
答:
(最後の部分で、任意の について となることを使った)
1対1写像(単写)†
も の線形写像である、 が、 となる。
このように、一般の写像では異なるベクトルが同じ値に移される場合がある。
であれば必ず であるとき、 は1対1写像である、あるいは、単写である、と言う。
1対1という言葉の意味:1対nはそもそも写像にならない。n対1になっていないことを示している。
上への写像(全写)†
任意の に対して、そこに移ってくる の元を見つけられる時、 上への写像、あるいは、全写であるという。
例えば、
は
への全写であるが、
は
への全写ではない。
「上へ」というのは、 により 全体を移したときにできる「像」 (しばしば と書かれる) が、 の真上に、全体を覆い尽くすように被さるため。
上への1対1写像(全単写)†
単写かつ全写であることを言う。
このときに限り、「逆写像 」が定義できる。
- 1対1でないと、ある に複数の が対応してしまう
- 上への写像でないと、ある に対応する が存在しない場合がある
練習†
問:線形写像の逆写像 は線形写像であることを示せ
答: とすると、
一方、
の両辺に を作用させると
また、
の両辺に を作用させると
となって、 が線形であることが示された。
同型†
と
との間に上への1対1写像
が存在する時、
と
は同型であるといい、
と書く。
またこのとき、 を同型写像と呼ぶ。
これは上で述べた2つの写像が「似ている」ことを数学的に表わした物。
同型写像によって、2つの空間はすべて1対1に対応することになる。
とか、
とかも同型写像になる。
すなわち同型である2つの線形空間の間の同型写像は一意には決まらないことに注意が必要。
線形空間の「同型」は同値関係の公理を満たす。すなわち、
- : 反射律
- : 対称律
- : 推移律
同型の線形空間は構造が似ているため、一方を調べればもう一方のことが分かる。
特に、あるベクトル空間
は
として、
必ず
に同型であるため、1年生でやった数ベクトル空間が、
任意の線形空間を理解するための基礎となる。
例†
の同型写像を とする。
が線形独立であれば、
も線形独立である。
対偶を証明する。
もし が線形独立でなければ、 すべてがゼロではない3つのスカラー に対して
が成立する。 は線形なので、
ここで両辺に を掛けると、 より、
はすべてがゼロではないから、 は線形独立ではない。