電磁気学/場の概念 の履歴(No.3)
更新第1章 真空電磁場の基本法則 (Maxwell方程式)†
古典論 = ニュートン力学 + 万有引力 + 電磁気学
原子核より大きく、惑星より小さい長さスケールで主役となるのが電磁気学。
電磁気を突き詰めることで特殊相対論の必要性も導ける。
この授業は学類(学部)にて電磁気学の基礎を学んだ大学院生が、 復習と+αを学ぶための授業なので、初めて電磁気学を学ぶ人には 向かない流れになっているかもしれないため注意が必要。
§1 場の概念†
「場」: 電場・磁場のこと → 抽象的で目に見えない
科学的に扱うため、観測可能な量を元に定義する。
静電気†
- こすると力(引力)を生じる
- 力の大きさは
- 距離の二乗に反比例する
- こする回数でも変化する
こすると「電荷」を生じると考える
電荷†
これも目に見えないので、間に働く力で定義する
例えば「1 m 離して 1 N の力を生じる電荷量」などとして電荷量を量ることができる。
通常は電荷 と が だけ離れているときの力を次のように表せるとする。
ただし、
これが電荷の定義式になる(
を決めれば)。
言い換えれば、単位長さ離した時に力
が働く電荷量を電荷の単位とする。
複数ある場合†静電力は重ね合わせが可能。
| 2倍の電荷があれば†同じ位置に の代わりに を置けば、2倍の力が働く。 |
電場の定義†
ある点に電荷を置くと「置いた電荷に比例した力」を受ける
→ その点に電場が生じていると考える
点
にある電場
は、
その点に電荷 を置いたら
の力を生じるような場
として定義される。
「電荷が電荷へ力を及ぼす」ところを、
「電荷が電場を生じ、電場が電荷へ力を及ぼす」と考える。
- 静電場では「電場の重ね合わせ」は「力の重ね合わせ」に通じ、 ワンクッション置くことには計算を簡単にする程度の意味しかない
- 動電場では電場の伝わる速度が重要になるため、電場無しでは話が進まない → 電磁波など
磁場の定義†
磁束密度 の定義は少し面倒
- 磁場中に電流があると、力を生じる(ことがある)
- 力の大きさは磁場、電流の両方に比例する
- ところが、電流の向きにもよる ( )
- 力の向きは、磁場、電流の両方に垂直である
- 力の大きさは磁場、電流の両方に比例する
右図は磁場 中に電流 が置かれた様子。 電流には と に垂直な力 がかかる。
式で書くと、
&math( \bm F&\propto\bm I\times\bm B\\
&\propto|I||B|\sin\theta
);
力は電流の流れる長さにも比例するため、次式が磁場の定義となる。
&math( \bm F=\bm I\times\bm B\ l );
外積はかけ算の順番を入れ替えると符号が変わるので、掛ける順番にも注意せよ。
磁場の測定†
電場は、試験電荷をその点に置いて、力を測定すれば測れる。
では、磁場はどうやったら測定できるだろう?
簡単のために、上図のような「棒状の電流」が手元にあるとして考えよう。 (当然、電流には戻りの経路が必要なので、本来はこんなことはできないが・・・)
- 電流を、磁場を測定する空間に置いてみる
- 置き方が悪いと力を生じないので、その場合には電流の向きを変えてみる
- どのように置いても力が検出されなければ磁場はゼロ
- 磁場による力が検出されたなら
- 力を受けた方向を軸に電流を回転させると、力の向きは変わらずに大きさだけが変化する
- 力がゼロになったら、そのときの電流の向きと平行に磁場が生じていることになる
- そこから電流を90度回して得られた力の大きさと向きから磁場の大きさと極性が分かる
単位の話†
遠隔相互作用と近接相互作用†
ここまでの話は、
1. 遠く離れた電荷同士が直接相互作用(遠隔相互作用)
2. 電荷が遠く離れた場所に電場を生じ(遠隔相互作用)、電場と電荷が相互作用
これらは電荷の存在が遠く離れたところに直接影響を及ぼすという意味で遠隔相互作用と呼ばれる。
動電磁場を正しく記述するにはには、近接相互作用に寄る記述が必須となる。
- 電荷の存在や運動は自身のごく近傍にしか影響を与えない
- 近接的な影響が徐々に空間伝播してもう一方の電荷に影響を及ぼす
- そのような相互作用はすべて(空間)微分形式で書かれる
以下、近接相互作用の形で基本方程式を求めていく。