フェムト秒分光
背景
超短パルスレーザを用いることで、ピコ秒(10-12秒)やフェムト秒(10-15秒)といった、極短時間に起こる物理現象を観測することができます。
10-12秒や10-15秒というと実感が湧かないかも知れませんが、これらは非常に短い時間スケールです。たとえば、1秒で地球を7回り半もする「光」でさえ、1ピコ秒(10-12秒)では 0.3ミリ しか進みません。
このような時間スケールは、原子と原子とを結ぶ分子結合の振動周期や、振動の減衰時間、励起状態にある電子やホールの緩和時間などに対応します。
光学的ポンププローブ法:超短パルスレーザーのそれぞれのパルスを、ある遅延時間を持つ2つのパルス対に加工し、各パルス対の最初のパルスを「ポンプ光」二つ目のパルスを「プローブ光」と呼びます。パルス対を試料に照射すると、ポンプ光で励起された試料の状態の変化(緩和過程)は、プローブ光の反射率に影響を与えます。従って、プローブ光の反射率を遅延時間の関数として計測すると、プローブ光の反射率の変化を通して、ポンプ光により励起された試料の状態変化(緩和過程)を観察することができます。このとき、時間的な分解能は、パルス光の時間幅によって決まり、フェムト秒領域のダイナミックスを追うことが可能になります。
重川研究室では、以下のようなテーマに取り組んでいます。
- GaAs への窒素ドープに伴い導入された欠陥準位が、光励起キャリアの再結合レートに及ぼす影響を反射率測定により解析
GaNαAs1-αのポンププローブ反射率測定
- 低次元有機伝導体の金属・絶縁体相転移(CDW相転移)に伴う超高速応答の変化を反射率測定により解析
β-(BEDT-TTF)2PF6のポンププローブ反射率測定
- 標準試料 Bi のコヒーレントフォノン周波数が励起強度に応じてシフトする様子を観察
Bi のポンププローブ反射率測定
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