スピントロニクス理論の基礎/X-4 の履歴(No.7)
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Green 関数について†
Green 関数の基礎†
与えられた に対して、
(X3-1)
を解いて を決定する問題を考える。
ここで、 は に対する微分や積分を含む線形な演算子。
具体的には例えば、
(X3-2)
のような問題。
斉次方程式†
一般に (X3-1) に比べて、 をゼロとした斉次方程式はずっと楽に解くことができる。
(X3-3)
この解を としておく。
つまり、
(X3-3)
非斉次方程式 (X1-1) の1つの解を とすると、
(X3-4)
これに斉次方程式の解を加えた も (X3-1) の解になるのは有名な話。
(X3-5)
非斉次方程式の1つの特殊解に、斉次方程式の一般解を加えることで、 非斉次方程式の一般解を求めることができる。
Green 関数†
もし (X3-1) の に対して、
(X3-6)
となるような関数 = Green 関数を求めることができれば、
(X3-7)
&math( \hat L_x f(x)&=h(x)=\int_{-\infty}^\infty dx' h(x') \delta(x-x')\\ &=\int_{-\infty}^\infty dx' h(x') \hat L_x g(x,x')\\ &=\hat L_x \int_{-\infty}^\infty dx' h(x') g(x,x') );
となる。ここで、 は に対する演算子で、 に関する微分等を含まないため、 や の積分と順序を入れ替えられることに注意。
(X3-7) の右辺を左辺に移項して、
(X3-8)
すなわち、[ ] 内は (X3-3) の形の斉次方程式の解となっている。
(X3-9)
このように、ある演算子 に対して、 その斉次方程式の解 と Green 関数 が求まってしまえば、微分・積分方程式 の解は単に を積分するだけで求めることができる。
すなわち、元の方程式の性質は Green 関数と斉次方程式の解とにすべて含まれていることになる。
注)以下でも見るように、一般には ばかりでなく にも任意性(不定パラメータ)が残るため、元の方程式に与えられた境界条件を満たすように および を正しく定めた後に (X3-9) の積分を行う必要がある。
Green 関数の意味†
(X3-9) を、
&math( f(x) - f_0(x) = \int_{-\infty}^\infty dx' h(x') g(x,x') );
と書けば、 とした斉次解と が存在するときの とのずれを で表せていることになる。
の位置への の位置からの の影響が と表せ、それらを積分した物がずれ全体の大きさを与える。
練習†
解くべき方程式として、1粒子のシュレーディンガー方程式
(X3-10)
&math(
- i\hbar \frac{\PD}{\PD t}\psi(\bm r,t)=\left(-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_{\bm r}^2+V(\bm r,t)\right)\psi(\bm r,t) );
を考える。
特に、 として、容易に解けるポテンシャル に扱いの難しい が加わった効果を考えよう。
このとき、
(X3-11)
&math( \underbrace{\left(-i\hbar \frac{\PD}{\PD t}+\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_{\bm r}^2-V_0(\bm r,t)\right)}_{\hat L_{\bm r,t}}\psi(\bm r,t) =\underbrace{V'(\bm r,t)\psi(\bm r,t)}_{h(x)} );
と見なせば、この問題を (X3-1) と同様に Green 関数を用いて解くことができる。
すなわち、
(X3-12)
を満たす斉次方程式の解 ( のみの時の波動関数)と、
(X3-13)
を満たす Green 関数を用いて、方程式の解を
(X3-14)
&math(\psi(\bm r,t) = \psi_0(\bm r,t) + \int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt' V'(\bm r',t') \psi(\bm r',t') g(\bm r,t,\bm r',t'));
と表せる。
ただこの式が (X3-9) と大きく異なるのは、 右辺にも求めたい が入っていることである。 すなわち、(X3-9) は解ではなく、未だ の「方程式」である。 を求めるにはこの方程式を解かなければならない。
形式的には、(X3-14) の右辺の に (X3-14) 自体を繰り返し代入して、
(X3-15)
&math( \psi(\bm r,t) &= \psi_0(\bm r,t) + \int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt' g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') \left[\psi_0(\bm r',t') + \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt g(\bm r',t',\bm r,t) V'(\bm r,t) \psi(\bm r,t)\right]\\ &=\psi_0(\bm r,t)\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt'\ g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') \psi_0(\bm r',t')\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt'\int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt\ g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') g(\bm r',t',\bm r,t) V'(\bm r,t) \psi_0(\bm r,t)\\ &+\dots );
のように解を書ける。
- が小さいときには の次数で打ち切ることで近似解を求められそう
- が大きくても、級数をうまく足せる場合には正確な値を求められるかも?
今の場合†
http://wyvern.phys.s.u-tokyo.ac.jp/f/lecture/corrcondmat/dyson.pdf を発見して気付いたことには、
今の場合には1粒子のシュレーディンガー方程式ではなく、第2量子化後の Heisenberg 方程式を元にする必要がある。忘れてた(汗)
その形は (8.21) で見たように
である。§9-1 あたりまでを念頭に、ハミルトニアン演算子を
として不純物散乱ポテンシャル、静電ポテンシャル、それ以外に分けて書けば、(8.29A)、(8.106)、(9.1) より
&math( H_0=\int d^3r \Bigg[c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r,t)\Bigg(\frac{\hbar}{2m}\nabla^2-\varepsilon_F\Bigg)c_{\mathrm H}(\bm r,t)\Bigg] );
&math( V_i=\int d^3r \left[c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r,t)v_i(\bm r)c_{\mathrm H}(\bm r,t)\right] );
&math( V_\phi=\int d^3r \left[c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r,t)\,e\phi_{\mathrm H}(\bm r,t)\,c_{\mathrm H}(\bm r,t)\right] );
などとなる。
各成分について の交換関係を調べると・・・
(8.24) より
(8.30A) より
同様に が成り立てば、
などが分かる。
#あれ、 のハイゼンベルグ表示とシュレーディンガー表示との区別をちゃんとしてないけれど大丈夫だろうか?
すなわち、電子・電子相互作用が無い場合、
&math( &-i\hbar\frac{\PD}{\PD t}c_{\mathrm H}(\bm r,t)=[H,c_{\mathrm H}(\bm r,t)] \\&= \Big[\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+\varepsilon_F-v_i(\bm r,t)-v_\phi(\bm r,t)+\cdots\Big]c_{\mathrm H}(\bm r,t) );
となって、整理すると解くべき方程式は
&math( \Big[-i\hbar\frac{\PD}{\PD t}-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2-v_0(\bm r,t)\Big]c_{\mathrm H}(\bm r,t) =-v'(\bm r,t) c_{\mathrm H}(\bm r,t) );
であり、符号を除いて上記1粒子のシュレーディンガー方程式に帰着する。
電子・電子相互作用について†
電子・電子相互作用を組み入れる場合には上記リンク先のように、
&math( V'=\frac{1}{2}\int d^3r\int d^3r' c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r,t)c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r',t) v'(\bm r,\bm r',t) c_{\mathrm H}(\bm r,t)c_{\mathrm H}(\bm r',t) );
の形のポテンシャルを追加で考えれば良い。
の交換関係は、
&math( &[V',c_{\mathrm H}(\bm r,t)] \\&= \int d^3r' \int d^3r\frac{1}{2} v'(\bm r',\bm r,t)\Big[c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r,t)c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r',t) c_{\mathrm H}(\bm r',t)c_{\mathrm H}(\bm r,t)\,,\ c_{\mathrm H}(\bm r,t)\Big] );
括弧内を略記して、生成・消滅演算子の交換関係
に注意しながら変形すると、
&math( &\Big[c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \,,\ c \Big] \\&= + c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' \underline{c{} c} - c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \\&= - c^\dagger{}c^\dagger{}' \underline{c{}' c} c{} - c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \\&= + c^\dagger{}\underline{c^\dagger{}' c} c{}' c{} - c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \\&= - \underline{c^\dagger{}c}c^\dagger{}' c{}' c{} + c^\dagger{} \underline{c{}' c{}} \delta(\bm r'-\bm r) - c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \\&= +c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{}- c^\dagger{}' c{}' c{}\delta(\bm r-\bm r) - c^\dagger{} c{} c{}' \delta(\bm r'-\bm r) - c c^\dagger{}c^\dagger{}' c{}' c{} \\&= - c^\dagger{}' c{}' c\delta(\bm r-\bm r) - c^\dagger{} c{}'' c \delta(\bm r'-\bm r) );
したがって、
&math( &[V',c_{\mathrm H}(\bm r,t)] \\&= \int d^3r' \int d^3r \frac{1}{2} v'(\bm r',\bm r,t)\Big[ - c^\dagger{}' c{}' c{}\delta(\bm r-\bm r) - c^\dagger{} c{} c{}' \delta(\bm r'-\bm r)\Big] \\&= \int d^3r' \frac{1}{2} \Big[ - v'(\bm r',\bm r,t) c^\dagger{}' c{}' c - v'(\bm r,\bm r',t) c^\dagger{}' c{}' c \Big] );
相互作用が対称性を満たせば を使って、
&math( &[V',c_{\mathrm H}(\bm r,t)] \\&= \int d^3r' \Big[ - v'(\bm r',\bm r,t) c^\dagger{}' c{}' \Big] c \\&= - \Big[\int d^3r'\ c^\dagger(\bm r',t) v'(\bm r',\bm r,t) c(\bm r',t) \Big] c(\bm r,t) );
と表せる。
電子・電子相互作用を入れた場合、
&math( &-i\hbar\frac{\PD}{\PD t}c_{\mathrm H}(\bm r,t)=[H,c_{\mathrm H}(\bm r,t)] \\&= \Big[\underbrace{\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+\varepsilon_F-v_i(\bm r,t)-v_\phi(\bm r,t) }_{h(\bm r,t)}
- \Big\{\int d^3r'\ c_{\mathrm H}^\dagger(\bm r',t) v'(\bm r',\bm r,t) c_{\mathrm H}(\bm r',t) \Big\}
- \cdots\Big]c_{\mathrm H}(\bm r,t) );
である。
ここから Dyson 方程式を導出する方法はまだ理解できていないのだけれど、 教科書で 8-10 あたりを読むためには必要なさそうなのでしばらくそのままにして進んでみる。
Green 関数の性質†
以下、1電子のシュレーディンガー方程式の式で色々考えてしまったのだけれど、 第2量子化後の式でもほぼ同じになりそうなので・・・ ちょっとノーテーションがおかしいけれどとりあえずそのまま放置します。
因果律†
Green 関数が にしか値を持たないことが「因果律」に相当する。
Green 関数が にしか値を持たなければ、時刻の積分を 以下の時間範囲に限定できて、
(X3-16)
&math( \psi(\bm r,t) &=\psi_0(\bm r,t)\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\ g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') \psi_0(\bm r',t')\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\int d^3x \int_{-\infty}^{t'} dt\ g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') g(\bm r',t',\bm r,t) V'(\bm r,t) \psi_0(\bm r,t)\\ &+\dots );
これは「 "現在の" 波動関数は "過去の" 波動関数と "過去の" ポテンシャルにのみ依存する」という主張に対応する。
しかしよく知られるように、シュレーディンガー方程式を始めとする物理学の基礎方程式には、 時間の矢の指し示す方向に関する情報は含まれておらず、時間の反転に対して対称である。
もし Green 関数に因果律が現われることがあるとすれば、 それは Green 関数の取り方に任意性があるためで、 時間に対する境界条件を満たすように Green 関数を選ぶと、ある場合には因果律が現われてくる、 と言う話なのだと思う。
Green 関数が r や t の相対値で表される意味†
元のポテンシャル が や を顕わに含んでいなければ、
(X3-17)
のように、Green 関数は座標の相対値で表されることになる。
これは、得られる解が新たに導入する の絶対座標や絶対時刻に依存しないという意味だから物理的には当然。 すなわち、元の系が空間、時間に対する並進対称性を持つ場合、 を導入する時刻や位置を一定値ずらしたなら、 同じだけずれた解が得られるべき。
このように相対座標や相対時刻で表されたグリーン関数を教科書のようにフーリエ変換すると、
(X3-18)
のようにフーリエ成分の非対角項がゼロとなる。
教科書ではこのことを「エネルギーや運動量が保存する」と言っているのだけれど、
何のエネルギー、何の運動量が何と何との間で保存する話をしているのか、
今ひとつ理解できていない。
→ 元のハミルトニアンに
や
が顕わに現われないことと、
粒子の運動のエネルギーや運動量が常に保存することとが一対一に対応する???
→ いわゆる解析力学の対称性の話からすれば、時間や空間座標の並進対称性が
全エネルギーや全運動量の保存則と関連していることになるのだけれど、
そういう話・・・になっているのかどうか、ちょっと真意が分からない
(X3-19)
&math( \psi_{\bm k,\omega} &= \psi_{0\bm k,\omega} + \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt e^{i\bm k\cdot\bm r} e^{-i\omega t} \ \int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt' g(\bm r,t,\bm r',t') \\&\times \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \delta(\bm r'-\bm r)\delta(t'-t) V'(\bm r,t) \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \delta(\bm r'-\bm r)\delta(t'-t) \psi(\bm r,t) \\ &= \psi_{0\bm k,\omega} + \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt' e^{i\bm k\cdot\bm r} e^{-i\omega t} g(\bm r,t,\bm r',t') \\&\times \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \frac{1}{V}\sum_{\bm k'} e^{i\bm k'\cdot (\bm r-\bm r')} \int \frac{d\omega'}{2\pi} e^{-i\omega'(t-t')} V'(\bm r,t) \\&\times \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \frac{1}{V}\sum_{\bm k} e^{i\bm k\cdot (\bm r-\bm r')} \int \frac{d\omega}{2\pi} e^{-i\omega(t-t')} \psi(\bm r,t) \\ &= \psi_{0\bm k,\omega} + \frac{1}{V}\sum_{\bm k'} \int \frac{d\omega'}{2\pi} \frac{1}{V}\sum_{\bm k} \int \frac{d\omega}{2\pi} \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt \int d^3x' \int_{-\infty}^\infty dt' \ e^{i\bm k\cdot\bm r} e^{-i\omega t} g(\bm r,t,\bm r',t') e^{-i(\bm k'+\bm k)\cdot\bm r'} e^{i(\omega'+\omega) t'} \\&\times \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt e^{i\bm k'\cdot \bm r} e^{-i\omega't} V'(\bm r,t) \\&\times \int d^3x \int_{-\infty}^\infty dt e^{i\bm k\cdot (\bm r-\bm r')} e^{i\omega(t-t')} \psi(\bm r,t) \\ &= \psi_{0\bm k,\omega} + \frac{1}{V}\sum_{\bm k'} \int \frac{d\omega'}{2\pi} \frac{1}{V}\sum_{\bm k} \int \frac{d\omega}{2\pi} g_{\bm k,\bm k'+\bm k,\omega,\omega'+\omega} V'_{\bm k',\omega'} \psi_{\bm k,\omega} \\ );
そして、特に「エネルギーや運動量が保存される場合」には、
(X3-20)
&math( \psi_{\bm k,\omega} &= \psi_{0\bm k,\omega} + \frac{1}{V}\sum_{\bm k'} \int \frac{d\omega'}{2\pi} \frac{1}{V}\sum_{\bm k} \int \frac{d\omega}{2\pi} 2\pi\delta(\omega-\omega'-\omega)\delta_{\bm k,\bm k'+\bm k}g_{\bm k,\omega} V'_{\bm k',\omega'} \psi_{\bm k,\omega} \\ &= \psi_{0\bm k,\omega} + \frac{1}{V^2}\sum_{\bm k'} \int \frac{d\omega'}{2\pi} g_{\bm k,\omega} V'_{\bm k',\omega'} \psi_{\bm k-\bm k',\omega-\omega'} );
となる。
だから、対角成分しか残らないときにも が必ずしも や だけに依存していると言うわけではない。
グリーン関数の k, k' を始状態・終状態と参照する意味†
元の微分方程式 (X3-10) を解くいう意味に於いては、Green 関数の および 成分というのは (X3-19) で用いるような意味しか持たない。
しかし、教科書ではファインマン図等を書きながら、 あたかも や が始状態・終状態であり、 その間で散乱を受ける(何が?)といった参照の仕方が見受けられる。
このような呼び方・見方はどういった意味で行われているのか・・・まだ理解できていない。
- どっちが始状態でどっちが終状態か、という議論に意味があるのか?
→ Green 関数は必ずしも時間反転に対して対称ではないが・・・ - 始状態、終状態とは「何の」状態か?
それともこれは何らかのアナロジーで、単に式の形が別の問題の式と似ているとか、 そういう話なのだろうか?
たとえば、(X3-15) の積分変数の名前を付け替えると、
&math( \psi(\bm r,t) &=\psi_0(\bm r,t)\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\Big[ g(\bm r,t,\bm r',t') \Big] V'(\bm r',t') \psi_0(\bm r',t')\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\left[ \int d^3x \int_{t'}^{t} dt \ g(\bm r,t,\bm r,t) V'(\bm r,t) g(\bm r,t,\bm r',t') \right] V'(\bm r',t') \psi_0(\bm r',t')\\ &+\dots\\ &=\psi_0(\bm r,t)\\ &+\int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\Bigg[ g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') \\ &\hspace{1cm}+\int d^3x \int_{t'}^{t} dt \ g(\bm r,t,\bm r,t) V'(\bm r,t) g(\bm r,t,\bm r',t') V'(\bm r',t') + \dots \Bigg] \psi_0(\bm r',t')\\ &=\psi_0(\bm r,t)
- \int d^3x' \int_{-\infty}^t dt'\ G(\bm r,t,\bm r',t') \psi_0(\bm r',t')\\ );
のようにまとめることができて、このとき
である。
に含まれる各項は、時刻 位置 における波動関数値 が追加のポテンシャル と の各点で 回の相互作用をして時刻 位置 における波動関数値 に与える影響を表していると見なすことができる。
もっとも は上記の意味での Green 関数「ではない」。 すなわち (X3-12) を満たさない。
Green 関数が含む情報†
上の議論から、Green 関数(の一般解)には に関する斉次方程式の情報しか含まれないことになる。
だから、Green 関数(の一般解)を導くのに熱統計平均などの概念を用いる必要はないはず。
しかし、教科書では Green 関数の導出に初期時刻における熱平衡状態の存在を仮定しており、 また、結果導かれた Green 関数に因果律(時間の矢の方向の情報)が含まれている。
加えて、Green 関数に の4種類があることも重要。
たとえば、上記のように解を求める際には、このうちどれを使えば良いのだろうか? という疑問が当然持ち上がる。
このあたり、Green 関数には演算子の性質の他に「境界条件」の情報が含まれているのではないかと想像している。
物理学の基本方程式となる微分方程式が時刻の反転に対して対称であっても、 実世界には明らかに「時間の矢」が存在している。 これは恐らく現実的な解を得るためには境界条件(時刻無限大でエントロピーが最大化する?) を含めて考えなければならないと言うこと。
そのような境界条件を満たす Green 関数を導くのに上記の4つの Green 関数が役立つということじゃないか・・・と。
まったく想像の域を出ないのだけど。
Green 関数に含まれる t0†
教科書では Green 関数の導出に特別な時刻 を用いた。
これは系の初期状態が与えられる時刻である。
Green 関数に における状態が含まれるのは、 これも上で述べた「境界条件」と同様の話なのだろうか?
4つの Green 関数 + 2†
- retarded = 遅延
- &math(g_{0}^r=-i\theta(t-t')\llangle \{c_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}'\} \rrangle
=\frac{1}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}+i0});
でしか値を持たず因果律を満たしている - advanced = 先進
- &math(g_{0}^a=i\theta(t'-t)\llangle \{c_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}'\} \rrangle
=\frac{1}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}-i0});
でしか値を持たず反因果律(?)を満たしている - time order = 時間順序
- &math(g_{0}^t&=-i\llangle Tc_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}' \rrangle=-i\theta(t-t')\llangle c_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}'\rrangle+i\theta(t'-t)\llangle c_{\mathrm H}^\dagger{}'c_{\mathrm H}\rrangle\\
&=\frac{f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}-i0}
+\frac{1-f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}+i0}
);
と と両方に値を持つ - anti time order = 逆時間順序
- &math(g_{0}^{\bar t}&=-i\llangle \bar Tc_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}' \rrangle=i\theta(t-t')\llangle c_{\mathrm H}^\dagger{}'c_{\mathrm H}\rrangle-i\theta(t'-t)\llangle c_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}'\rrangle\\
&=-\frac{1-f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}-i0}
-\frac{f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}+i0});~
と と両方に値を持つ - lesser
- &math(g_{0}^<&=+i\llangle \bar c_{\mathrm H}^\dagger{}'c_{\mathrm H} \rrangle\\
&=+\frac{f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}-i0}
-\frac{f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}+i0});~
経路順序 Green 関数ではあるが、実時間上では Green 関数にはならない - greater
- &math(g_{0}^>&=-i\llangle \bar c_{\mathrm H}c_{\mathrm H}^\dagger{}' \rrangle\\
&=-\frac{1-f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}-i0}
+\frac{1-f_{\bm k}}{\hbar\omega-\varepsilon_{\bm k}+i0});~
経路順序 Green 関数ではあるが、実時間上では Green 関数にはならない
注) 経路順序の Dyson 方程式を実時間に射影すると Dyson 方程式にならない理由は であっても となる可能性があるため、 なところにある。
より、
と置けば、任意の係数 に対して
となって、 は Dyson 方程式を満たす。
つまり、
にはこれだけの任意性があると言うこと。
→ 他にはないことを検証していないので、恐らくもっと他にも自由度はあるのかも
上記のように Green 関数を使ってシュレーディンガー方程式を解くという問題を考えれば、 これらの係数も系に合わせて正しく決定してやらなければ解を得られないことになる。
には の情報(初期条件)が含まれているが、 には含まれていない。実のところ、 は元の方程式の「時間発展の情報のみ」しか含んでいない by 佐野先生。
9 章で電荷密度、電流密度を求めるには を調べているので、そちらには初期状態の情報が入ってきているはず。