スピントロニクス理論の基礎/4 のバックアップ差分(No.8)

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[[スピントロニクス理論の基礎]]

* 4 強磁性体の微視的記述 [#td189448]

#contents

* 4-1 強磁性ラグランジアンと磁化の運動 [#la3824e6]

(2.12) を極座標表示に直す。

&math(\bm S(\bm r)); は空間的に大きさは一定で(&math(|\bm S(\bm r)|=S(\bm r)=S);)、
その方向のみが変化するとすれば、&math(\bm S); の方向を表す &math(\theta(\bm r)); や
&math(\phi(\bm r)); を空間座標の関数として、(4.2)

&math(
\bm S(\bm r) \equiv S\bm n = \begin{pmatrix} S \sin\theta(\bm r) \cos\phi(\bm r)\\ S\sin\theta(\bm r) \sin\phi(\bm r) \\ S\cos\theta(\bm r) \end{pmatrix}
);

と表せる。このとき、

&math(
\Delta \theta=\theta(\bm r+\bm a)-\theta(\bm r)=\bm a\cdot \nabla\theta(\bm r)
);

&math(
\Delta \phi=\phi(\bm r+\bm a)-\phi(\bm r)=\bm a\cdot \nabla\phi(\bm r)
);

そして、

&math(\theta \rightarrow \theta+\Delta\theta); のとき &math(|\Delta \bm S| = S \Delta\theta);

&math(\phi \rightarrow \phi+\Delta\phi); のとき &math(|\Delta \bm S| = S \sin\theta \Delta\phi);

より、

&math(
\sum_{\bm a=a \bm e_x, a\bm e_y, a\bm e_z} &\{\bm S(\bm r+\bm a)-\bm S(\bm r)\}^2\\
&=a^2S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}^2
);

したがって、(4.1)

&math(
H_J=&\,\frac{J}{2}\sum_{\bm r}\{\nabla \bm S(\bm r)\}^2\\
=&\,\frac{J}{2}\int\frac{d^3r}{a^3}\{\nabla \bm S(\bm r)\}^2\\
=&\,\red{+}\frac{J}{2}\int\frac{d^3r}{a^3}S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}^2
);

を得る。(空間的に一様の時に最もエネルギーが低いはずで、教科書の符号は誤り)

** 磁気異方性 [#x3d58553]

(2.12) は物質が等方的な場合の話で、容易軸・困難軸等がある場合には

&math(-\frac{K}{2}S_z^2); z軸に向きやすい

や、

&math(\frac{K_\perp}{2}S_y^2); y軸に向きにくい

などの項を含める場合もある。

例えば前者の場合が (4.3)

&math(
H_S=&\int\frac{d^3r}{a^3}\left(\red{+}\frac{J}{2}S^2\{(\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2\}^2-\frac{K}{2}S^2\cos^2\theta\right)
);

ただし、教科書では一項目の符号が逆になっている。

** ラグランジアンの導出 [#g730d5e7]

ハミルトニアンからラグランジアンを求めるには、
スピンを記述する力学変数と、その共役運動量を知る必要がある。

しかしスピンの力学変数 &math(\bm S); は、半径 &math(S); の球面上の束縛されているため、
簡単にラグランジアンを求めることができない。

別の言い方をすれば、スピンの量子自由度は SU(2) の交換関係

&math([\hat S_x,\hat S_j]=i\hbar\sum_k \epsilon_{ijk}\hat S_k);

を満たしており、通常の 通常の &math([\hat p,\hat x]=-\hbar); 型の交換関係ではないことが
困難の原因となる。

このような場合、簡単にラグランジアンを導出するには経路積分表示をすることになる(らしい)。

そこから求まるのが、(4.5) らしい。

&math(
L_S=\int\frac{d^3r}{a^3}\hbar S\dot \phi(\cos\theta-1)-H_S\equiv L_B-H_S
);

以下に見るように、スピンのダイナミクスは &math(H_S); よりもむしろここで出てくる &math(L_B); で規定されるので、本来であれば (4.5) の導出がとても重要なんだけれど・・・ここでは飛ばされている。

** 運動方程式 [#y78d5021]

実際に運動方程式を見てみよう。(4.7)

&math(
\frac{d}{dt}\left(\frac{\delta L_S}{\delta \dot \theta}\right)-\frac{\delta L_S}{\delta \theta}=0
);

&math(
\frac{d}{dt}\left(\frac{\delta L_S}{\delta \dot \phi}\right)-\frac{\delta L_S}{\delta \phi}=0
);

より、(4.8)

&math(
&0-\left(-\hbar S\sin\theta\dot\phi-\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\right )=0\\
&\hbar S\sin\theta\dot\phi=-\frac{\delta H_S}{\delta \theta}
);

&math(
&\frac{d}{dt}(\hbar S(\cos\theta-1))-\frac{\delta H_S}{\delta\phi}=0\\
&\hbar S\sin\theta\dot\theta=-\frac{\delta H_S}{\delta \phi}
);

なる、&math(\theta,\phi); に対して対称性の良い式を得る。

&math(\delta); は汎関数微分を表す。すなわち、&math(H_S); は &math(\theta(\bm r)); や &math(\phi(\bm r)); の関数であり、&math(\theta(\bm r)); や &math(\phi(\bm r)); 自体が &math(\bm r); の関数である。

言うなれば、&math(H_S); は &math(\bm r); 座標上のすべての点での &math(\theta); 値や &math(\phi); 値に依存する多変数関数であり、さらに、&math(L_B); は &math(\dot\phi); にも陽に依存している。このような無限個の変数に依存する関数に対する「偏微分」のようなものを書くために汎関数微分が用いられる(そうです)。参照 → http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/functional.html

** Landau-Lifshitz方程式 [#be8f0c8a]

もう少し見通しを良くするために、ベクトル &math(\bm S); を用いて書き直す。

&math(
\bm S=S\bm n=S\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\ \sin\theta\sin\phi\\ \cos\theta\end{pmatrix}
);

より、(4.9), (4,10)

&math(
\frac{d\bm S}{dt}
&=S\dot\theta\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\phi\\ \cos\theta\sin\phi\\ -\sin\theta\end{pmatrix}
+S\dot\phi\begin{pmatrix}-sin\theta\sin\phi\\ \sin\theta\cos\phi\\ 0\end{pmatrix}\\
&\equiv S(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)
);

同様に、

&math(\theta\rightarrow\theta+\delta\theta); に対して &math(\Delta \bm S=S\delta\theta\bm e_\theta); ~
&math(\phi\rightarrow\theta+\delta\phi); に対して &math(\Delta \bm S=S\sin\theta\delta\phi\bm e_\phi); ~

ここから、任意の関数 &math(F(\theta,\phi)); に対して(4.11)

&math(
\frac{\delta F}{\delta\theta}=S\left(\bm e_\theta\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S}\right)
);

&math(
\frac{\delta F}{\delta\phi}=S\sin\theta\left(\bm e_\phi\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S}\right)
);

ただし、&math(\frac{\delta F}{\delta\bm S}); は &math(\bm S); の変化に対する &math(F); の勾配 &math(\bm\nabla_{\bm S}\,F); の汎関数微分表示である。すなわち、&math(\delta\bm S); の変化に対する &math(F); の変化量が &math(\Delta F=\delta \bm S\cdot\frac{\delta F}{\delta\bm S}); と書けるものとしている。

(4.9) に (4.8) を代入すると、

&math(
\hbar \dot{\bm S}
&=\left(\frac{1}{\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}{\bm e}_\theta-\frac{\delta H_S}{\delta\theta}{\bm e}_\phi\right)\\
&=S\left\{\bm e_\theta\left(\bm e_\phi\cdot\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\right)
-\bm e_\phi\left(\bm e_\theta\cdot\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\right)\right\}\\
);

ベクトル3重積の公式から、一般に

&math(\bm A\times(\bm B\times\bm C)=(\bm A\cdot\bm C)\bm B-(\bm A\cdot \bm B)\bm C);

が成り立つので、(4.12)

&math(
\hbar \dot{\bm S}
&=S\left(\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times(\bm e_\theta\times\bm e_\phi)\right)\\
&=\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times \bm S
);

ここで、&math(\bm e_\theta\times\bm e_\phi=\bm n); を用いた。

(4.12) は、ある点 &math(\bm r); に存在するスピン &math(\bm S(\bm r)); の運動が、
他のスピン(ここでは隣接するスピン?)の作る &math(\frac{\delta H_S}{\delta \bm S});
に比例する有効磁場の下での歳差運動として記述されることを表している。

ある時刻において、&math(\bm r); に存在する有効磁場は(4.13)

&math(\bm B_S(\bm r)\equiv\frac{1}{\hbar\gamma}\frac{\delta H_S}{\delta \bm S});

と定義される。&math(\gamma\equiv\frac{g\mu_B}{\hbar}>0); は磁気回転比と呼ばれる定数。

これを用いると、(4.14)

&math(\hbar\dot{\bm S}=\hbar\gamma\bm B_S\times\bm S);

となって、一様磁化を持つマクロな強磁性体に対する Landau-Lifshitz 方程式に一致する。


** スピンの共役関係 [#x229fc86]

(4.5) より、&math(\phi); に共役な変数(運動量)&math(\hat P_\phi); を求めてみる。

&math(\hat P_\phi\equiv \frac{\delta L_B}{\dot\phi}=\hbar S(\cos\theta\, \red{-1}));

ではないのか???

* 4-2 スピンの Berry 位相項 [#k24d1fb5]

上記の通り、スピン系のラグランジアンの中で &math(L_B); が本質的な役割を担う。

これをスピン Berry 位相項と呼ぶ。(&math(L_B); の B は Berry の B と思われる)

スピンがゆっくり時間発展するとき、この項によりスピンの波動関数に「位相」が付く・・・
という意味はまだよく分かっていない。

ラグランジアン (&math(L_B);) の時間積分、作用項を (4.6) の定義に従って計算してみると、

(4.20A)

&math(
&\int_{t_0}^{t_1}dt\,L_B\\
&=\int_{t_0}^{t_1}dt\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \dot\phi(\cos\theta-1)\\
&=\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{t_0}^{t_1}dt\, \frac{\PD \phi(\bm r,t)}{\PD t}(\cos\theta(\bm r,t)-1)\\
&=\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{\phi(t_0)}^{\phi(t_1)}\!\! d\phi\, \{\cos\theta(\bm r,t(\phi))-1\}\\
);

となる。さらに

&math(
\cos\theta(\bm r,t(\phi))-1=-\int_0^{\theta(\bm r,t(\phi))}d\theta'\,\sin\theta'
);

の関係を用いると、

(4.20B)

&math(
&\int_{t_0}^{t_1}dt\,L_B\\
&=-\int\frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S \int_{\phi(t_0)}^{\phi(t_1)}\!\! d\phi\, \int_0^{\theta(\bm r,t(\phi))}d\theta'\,\sin\theta'\\
);

となるが、この式を図4.3左のように図形的に理解したければ、
(4.20A) の方が分かりやすいはずだ。

&attachref(fig4-3_left.png,,33%);

&math(\cos\theta-1); は上図左のように &math(\bm S); の方向ベクトル先端から単位球に北極で接する平面に下ろした垂線の足の長さを表している。教科書ではこれが子午線の長さを表しているかの様に書かれているが、その理由はよく分からない。

時刻 &math(t); と共に &math(\phi); が変化すると、この積分値は上図右のように &math(\bm S); 先端から下ろした垂線が通過する面の面積を表すことに・・・・・あれ、ならないのか。&math(d\phi); が面に平行じゃないから簡単には図形で表せないかも?教科書ではこれを北極(&math(\theta=0);)から測った立体角としているが、やはりこれは間違いと感じられる。

また、その後の議論では、&math(\phi=0); の線に沿って、あるいは &math(\phi=\pi); の線に沿って、スピンが &math(\theta=0); から &math(\theta=\pi); まで変化する状況に関して考察されているが、&math(L_B\propto\dot\phi); であるから &math(\phi); が時間的に変化しない限り &math(L_B=0); であるため、この議論も意味が分からなかった。

後で文献 [57,58] を当たってみなければ。。。

* 4-3 スピン系の持つ運動量 [#z457882f]

スピンは角運動量を持つが、通常の運動量を持つか? → YES

** まずは一般論から [#qb60b733]

一般的に、エネルギーおよび運動量の保存則は系の時間に対する、あるいは空間に対する並進対称性から導かれる。以下にそれを見よう。

系のラグランジアン密度が &math(\mathcal L); で表されるとする。このとき系のラグランジアンは、

&math(
L(t)\equiv\int d^3r\,\mathcal L(\bm r,t)
);

また、系の座標パラメータ &math(t,x,y,z); を &math(x_0,x_1,x_2,x_3); で表す。

&math(\mathcal L); は変数 &math(\varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3)); およびその導関数
&math(\PD_\mu \varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3)\equiv\frac{\PD}{\PD x_\mu}\varPsi^\alpha(x_0,x_1,x_2,x_3)); ただし &math(\mu=0,1,2,3); の関数であるとする。

この場合の古典的な運動方程式は、ラグランジアンの時間積分、すなわちラグランジアン密度の時空積分として定義される作用(action) &math(I); を極小にするという条件から決まる。

&math(
I=\int_{t_1}^{t_2}dt\,L(t)=\int_{t_1}^{t_2}dx_0\int dx_1\int dx_2\int dx_3\,\mathcal L
);

すなわち、変数 &math(\varPsi^\alpha); のいかなる微小変化 &math(\varPsi^\alpha\rightarrow\varPsi^\alpha+\delta\varPsi^\alpha); に対しても、作用の変化が停留していることになる。

&math(
\delta I=\iiiint d^4x\, \frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}\delta \varPsi^\alpha=0
);

これが任意の &math(\delta\varPsi^\alpha); に対して成り立つことから、

&math(\frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}=0);

が条件となる。上記の通り &math(\mathcal L); が &math(\varPsi^\alpha); と
&math(\PD_\mu\varPsi^\alpha); の関数である場合には、

(4.21)

&math(
\frac{\delta I}{\delta \varPsi^\alpha}=\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD\varPsi^\alpha}
-\sum_{\mu=0}^{3}\frac{\red\PD}{\red\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD (\PD_\mu\varPsi^\alpha)}\right)=0
);

である。左辺は汎関数微分、右辺は通常の偏微分で書かれるのが正しいはず。(汎関数微分については http://homepage2.nifty.com/eman/analytic/functional.html 等を参照)

以降では &math(\mu,\nu); は &math(0,1,2,3); を渡る添え字、&math(i,j); は &math(1,2,3); を渡る添え字として、その範囲は省略する。

ここで、エネルギ運動量テンソル &math(T^{\mu\nu}); を次のように定義すると、
(教科書でこの定義が大幅に間違っている点について本多先生から指摘があった)

(4.22)

&math(
T^{\mu\nu}\equiv\red{\sum_\alpha}\,\frac{\red\PD\red{\varPsi^\alpha}}{\red\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)-\delta_{\mu\nu}\red{\mathcal L}
);

(4.24)

&math(
\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}=&\left[\sum_{\nu,\alpha}\frac{\PD}{\PD x_\nu}\frac{\PD{\varPsi^\alpha}}{\PD x_\mu}\left(\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)\right]-\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}\\
);

(4.25)

&math(
\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}=\sum_{\alpha}\left(
\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD\varPsi^\alpha}+
\sum_{\nu}\frac{\PD^2\varPsi^\alpha}{\PD \red{x_\mu}\PD \red{x_\nu}}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}
\right)
);

(4.26)

&math(
\frac{\PD\mathcal L}{\PD x_\mu}&=\sum_{\alpha}\left(
\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu}
\sum_{\mu'}\frac{\PD}{\PD x_{\mu'}}\frac{\PD\mathcal L}{\PD(\PD_{\mu'}\varPsi^\alpha)}+
\sum_{\nu}\frac{\PD^2\varPsi^\alpha}{\PD \red{x_\mu}\PD \red{x_\nu}}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}
\right)\\
&=\sum_{\nu,\alpha}\frac{\PD}{\PD x_\nu}\left(\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_\mu}\frac{\red\PD\mathcal L}{\red\PD(\PD_\nu\varPsi^\alpha)}\right)
);

より、

(4.23)

&math(
\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}=0
);

を得る。

この式を全空間で積分すれば、

(4.27A)

&math(
\int d^3r\sum_\nu\PD_\nu T^{\mu\nu}&=\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}+\int d^3r\sum_i\frac{\PD}{\PD x_i} T^{\mu i}\\
&=\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}+\int d^3r\sum_i \nabla_i T^{\mu i} = 0\\
);

(4.27B)

&math(
\therefore\int d^3r\,\frac{\PD T^{\mu 0}}{\PD t}=-\int d^3r\sum_i \nabla_i T^{\mu i}
);

無限遠では場がないことから右辺はゼロとなり、

(4.27C)

&math(
\frac{d}{d t}\int d^3r\,T^{\mu 0}=0
);

すなわちこの左辺の積分は保存量である。

(4.28A)

&math(E\equiv\int d^3r\,T^{00});

&math(P_i\equiv\int d^3r\,T^{i0});

と置けば、これらがエネルギーおよび運動量を表す。

具体的に書き下せば、

(4.28B)

&math(T^{00}=\left[\sum_\alpha\dot\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)\right]-\mathcal L);

&math(T^{i0}=\sum_\alpha\frac{\PD\varPsi^\alpha}{\PD x_i}\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right));

すなわち、

(4.28C)

&math(E=\int d^3r\left[\,\sum_\alpha\dot\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right)-\mathcal L\,\right]);

&math(\bm P=\int d^3r\,\sum_\alpha\bm\nabla\varPsi^\alpha\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\varPsi^\alpha}\right));

となる。

** スピン系では [#ta3b879f]

(4.28C) に (4.5) を代入すると(&math(H_S); が &math(\dot\theta,\dot\phi); に依存しないことから)、

(4.29)

&math(
E_S&=\int d^3r\left[\dot\theta\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\theta}\right)+\dot\phi\left(\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\phi}\right)-\mathcal L\,\right]\\
&=0+\int\frac{d^3r}{a^3}\dot\phi\hbar S(\cos\theta-1)-L_S\\
&=L_B-L_S\\
&=H_S
);

&math(
\bm P_S&=\int d^3r\,\left(\bm \nabla\!\theta\,\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\theta}+\bm \nabla\!\phi\,\frac{\PD\mathcal L}{\PD\dot\phi}\right)\\
&=\int d^3r\,\left(0+\bm \nabla\!\phi\,\frac{\hbar S}{a^3}(\cos\theta-1)\right)\\
&=\int \frac{d^3r}{a^3}\,\hbar S\, (\bm\nabla\!\phi)(\cos\theta-1)
);

(4.6) と比較すると運動量は空間方向の Berry 位相になっている(そうだ)。

* 4-4 局在スピンの緩和 [#x9214915]

(4.14) 式で見たように、スピン位置での有効磁場 &math(\bm B_S); がもし時間に依存しなければ、
磁場方向を向いていないスピンは永久に歳差運動を行うことになる。
しかし、実際には徐々に歳差運動が失われ、比較的速やかにスピンは磁場方向を向いて静止する。

この運動は、(4.14) にスピンの速度に比例した大きさ &math(\alpha|\dot S|); を持つ
「摩擦項」を加えることで記述できる。このときの比例係数 &math(\alpha); は 
Gilbert ダンピング定数と呼ばれ、金属磁性体の場合には 0.01 程度の大きさとなる。

(4.31)

&math(\dot {\bm S}=\gamma \bm B_S\times\bm S-\frac{\alpha}{S}\bm S\times \dot {\bm S});

まず、右辺から明らかに &math(\dot{\bm S}\perp \bm S); すなわち &math(\dot{\bm S}\cdot\bm S=0); である。

したがって、右辺第2項の大きさは

&math(\left|-\frac{\alpha}{S}\bm S\times \dot {\bm S}\right|=\alpha|\dot{\bm S}|);

と評価できる。

&math(\alpha); が小さいことから、&math(\dot{\bm S}); はほぼ &math(\bm B_S); に垂直であり、
&math(\bm e_\phi); 方向を向く。これが歳差運動成分である。

緩和項はさらにそれに垂直であり、&math(\bm e_\theta); 方向を向く。
これがスピンを磁場方向に向ける成分である。

(4.31) から (4.32) の導出は

&math(
&\dot{\bm S}=\gamma\bm B_S\times\bm S-\frac{\alpha}{S}\bm S\times\dot{\bm S}\\
&\bm S\times\dot{\bm S}=\bm S\times(\gamma\bm B_S\times\bm S)-\bm S\times\left(\frac{\alpha}{S}\bm S\times\dot{\bm S}\right)\\
&\dot{\bm S}\cdot(\bm S\times\dot{\bm S})=0=\dot{\bm S}\cdot\left\{S^2\gamma\bm B_S-(\gamma\bm B_S\cdot\bm S)\bm S\right\}+\dot{\bm S}\cdot(\alpha S\dot{\bm S})\\
&S^2\gamma\bm B_S\cdot\dot{\bm S}=-\alpha S\dot{\bm S}^2\\
&\gamma\bm B_S\cdot\dot{\bm S}=\red{\frac{1}{\hbar}}\frac{\delta H_S}{\delta \bm S}\cdot \dot{\bm S}=\red{\frac{1}{\hbar}}\frac{dH_S}{dt}=-\frac{\alpha}{S} \dot{\bm S}^2\\
&\frac{dH_S}{dt}=-\frac{\red{\hbar}\alpha}{S} \dot{\bm S}^2\\
);

途中で、&math(\bm S\perp\dot{\bm S}); すなわち &math(\bm S\cdot\dot{\bm S}=0); を使った。

脚注に依れば、この緩和項は時間微分に対する1次近似までを取り込んだ近似理論に過ぎず、
本来は高次項があってしかるべきであるとのこと。

* 4-5 スピンの運動方程式と磁壁解 [#w62c7ded]

** 運動方程式の H__S__ 依存性 [#c0d5695a]

(4.31) に (4.3) を代入して具体的な解を求める。

まず (4.9) より左辺は、

&math(
\frac{d\bm S}{dt}=S(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)
);

右辺第一項は、(4.13), (4.12) より、

&math(
\gamma\bm B_S\times\bm S&=\gamma\frac{1}{\hbar\gamma}\frac{\delta H_S}{\delta\bm S}\times \bm S\\
&=\frac{1}{\hbar}\left(\frac{1}{\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}\bm e_\theta
-\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\bm e_\phi\right)
);

右辺第二項は、

&math(
\bm n\times\bm e_\theta&=\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\\sin\theta\sin\phi\\\cos\theta\end{pmatrix}\times\begin{pmatrix}\cos\theta\cos\phi\\\cos\theta\sin\phi\\-\sin\theta\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}-\sin\theta\sin\phi\sin\theta-\cos\theta\cos\theta\sin\phi\\\cos\theta\cos\theta\cos\phi+\sin\theta\cos\phi\sin\theta\\\sin\theta\cos\phi\cos\theta\sin\phi-\sin\theta\cos\phi\cos\theta\sin\phi\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}-\sin\phi\\\cos\phi\\0\end{pmatrix}
=\bm e_\phi
);

&math(
\bm n\times\bm e_\phi&=\begin{pmatrix}\sin\theta\cos\phi\\\sin\theta\sin\phi\\\cos\theta\end{pmatrix}\times
\begin{pmatrix}-\sin\phi\\\cos\phi\\0\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}-\cos\theta\cos\phi\\-\cos\theta\sin\phi\\\sin\theta\cos\phi\cos\phi+\sin\theta\sin\phi\sin\phi\end{pmatrix}\\
&=\begin{pmatrix}-\cos\theta\cos\phi\\-\cos\theta\sin\phi\\\sin\theta\end{pmatrix}
=-\bm e_\theta
);

を用いれば、

&math(
-\frac{\alpha}{S}\bm S\times\frac{d\bm S}{dt}&=-\alpha \bm S \times(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)\\
&=-\alpha S\, \bm n \times(\dot\theta\bm e_\theta+\sin\theta\dot\phi\bm e_\phi)\\
&=-\alpha S (\dot\theta\bm e_\phi-\sin\theta\dot\phi\bm e_\theta)\\
);

そこで、&math(\bm e_\theta\perp\bm e_\phi); より &math(\bm e_\theta); の係数から
そこで、&math(\bm e_\theta\perp\bm e_\phi); より &math(\bm e_\theta,\bm e_\phi); のそれぞれの係数から

&math(
S\dot\theta=\frac{1}{\hbar\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}+\alpha S\sin\theta\dot\phi
);

&math(
S\sin\theta\dot\phi=-\frac{1}{\hbar}\frac{\delta H_S}{\delta \theta}-\alpha S \dot\theta
);

** H__S__ の汎関数微分 [#sdb9a9a5]

一方で、&math(H_S); の汎関数微分は、例えば

&math(
\delta H_S&= \int\frac{d^3r}{a^3}\ \delta\left(\red+\frac{J}{2}S^2((\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2)-\frac{K}{2}S^2\cos^2\theta\right)\\
&= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)\delta\theta+\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\cdot\delta(\bm\nabla\theta)\right\}\\
&= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\right\}\delta\theta\\
&= \int\frac{d^3r}{a^3}\left\{\frac{\delta H_S}{\delta\theta}\right\}\delta\theta\\
);

すなわち、

&math(
\frac{\delta H_S}{\delta\theta}=\frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)
);

のように偏微分で表せるから、

&math(
\frac{\delta H_S}{\delta\theta} &= \frac{\PD}{\PD\theta}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\theta)}\Big(***\Big)\\
&=JS^2\sin\theta\cos\theta(\nabla\phi)^2+KS^2\cos\theta\sin\theta-JS^2\nabla^2\theta\\
&=KS^2\left\{\lambda^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)+\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}
);

&math(
\frac{\delta H_S}{\delta\phi} &= \frac{\PD}{\PD\phi}\Big(***\Big)-\bm\nabla\cdot\frac{\PD}{\PD(\bm\nabla\phi)}\Big(***\Big)\\
&=-JS^2\bm\nabla\cdot(\sin^2\theta\bm\nabla\phi)
);

** 運動方程式 [#hae6b09a]

したがって、

(4.37)

&math(
-\sin\theta\dot\phi-\alpha \dot\theta&=\frac{1}{\hbar S}\frac{\delta H_S}{\delta \theta}\\
&=\frac{KS}{\hbar}\left\{\lambda^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)+\,\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}
);

(4.38)

&math(
\dot\theta-\alpha \sin\theta\dot\phi&=\frac{1}{\hbar S\sin\theta}\frac{\delta H_S}{\delta \phi}\\
&=-\,\lambda^2\frac{KS}{\hbar}\frac{1}{\sin\theta}\red{\bm\nabla\cdot}\,(\sin^2\theta\red{\bm\nabla}\phi)
);

となる。教科書の (4.3) の &math(J); の項は符号が間違っていることに注意が必要。

(4.39)

&math(\lambda\equiv\sqrt{\frac{J}{K}});

は後に見るように磁気構造の空間的スケールを規定する長さとなる。(例えば磁壁の厚さ)

** 自明な解 [#ncd752df]

&math(\theta(\bm r,t)=n\pi);

は、&math(n); を任意の整数値として上記運動方程式の自明な定常解を与える。

** 磁壁構造 [#c796b12d]

&math(z=-\infty); で &math(\theta=\pi);、&math(z=+\infty); で &math(\theta=0); となるような
定常的な (&math(\dot\theta=0);, &math(\dot\phi=0);) 一次元解 (&math(\PD\theta/\PD x=\PD\theta/\PD y=0);, &math(\PD\phi/\PD x=\PD\phi/\PD y=0);) が存在することを以下に示す。

まず、&math(\phi); は定数とする。

&math(\phi(\bm r,t)=\phi_0);

このとき、&math(\theta); の方程式は (4.37) より、

&math(
0=\frac{KS}{\hbar}\left(-\lambda^2\frac{d^2}{dz^2}\theta+\,\frac{1}{2}\sin 2\theta\right)
);

すなわち、

(4.40)

&math(\frac{d^2}{dz^2}\theta=\frac{1}{\lambda^2}\sin\theta\cos\theta);

を満たすことになる。両辺に &math(d\theta/dz); を掛けて &math(z); に対して積分すれば、

&math(
&\int dz\frac{d^2\theta}{dz^2}\frac{d\theta}{dz}=\frac{1}{2}\left[\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2\right]=\frac{1}{2}\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2+C' \\
&\int dz\frac{1}{\lambda^2}\sin\theta\cos\theta\frac{d\theta}{dz}=\frac{1}{2\lambda^2}\sin^2\theta+C''
);

(4.41)

&math(
\therefore\left(\frac{d\theta}{dz}\right)^2=\frac{1}{\lambda^2}\sin^2\theta+C
);

&math(z\rightarrow\pm\infty); で &math(\sin\theta\rightarrow 0); かつ &math(d\theta/dz\rightarrow 0); より、&math(C=0); であるから、

(4.42)

&math(
\frac{d\theta}{dz}=\mp\frac{1}{\lambda}\sin\theta
);

を得る。

&math(
\pm\frac{\lambda}{\sin\theta}\frac{d\theta}{dz}=1
);

の両辺を積分すれば、

&math(
\pm\int dz\frac{\lambda}{\sin\theta}\frac{d\theta}{dz}=\int dz=z+X'
);

&math(
&\pm\int d\theta\frac{\lambda}{\sin\theta}\\
&=\pm\int d\theta\frac{\lambda\sin\theta}{\sin^2\theta}\\
&=\pm\int d\theta\frac{-\lambda}{1-\cos^2\theta}\\
&=\pm\int dt\frac{-\lambda}{1-t^2}\\
&=\pm\int dt\frac{\lambda}{(t+1)(t-1)}\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\int dt\left(\frac{1}{t-1}-\frac{1}{t+1}\right)\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\Big[\log|t-1|-\log|t+1|\Big]\\
);

&math(
&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{t-1}{t+1}\right|+X''\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{\cos\theta-1}{\cos\theta+1}\right|+X''\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}\right|+X''\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\frac{\sin^2\frac{\theta}{2}}{\cos^2\frac{\theta}{2}}\right|+X''\\
&=\pm\frac{\lambda}{2}\log\left|\tan^2\frac{\theta}{2}\right|+X''\\
&=\pm\lambda\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|+X''\\
);

&math(
&\pm\lambda\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=z-X\\
&\log\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=\mp(z-X)/\lambda\\
&\left|\tan\frac{\theta}{2}\right|=e^{\mp(z-X)/\lambda}\\
);

&math(0\le\theta\le\pi); の範囲では &math(\tan\frac{\theta}{2}\ge 0); であるから、

&math(
&\tan\frac{\theta}{2}=e^{\mp(z-X)/\lambda}\\
);

と書け、積分定数 &math(X); は磁壁の中心位置を表す。

&math(
&\tan^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{1+\cos\theta}=e^{\mp 2(z-X)/\lambda}\\
&1-\cos\theta=(1+\cos\theta)e^{\mp 2(z-X)/\lambda}\\
&1-e^{\mp 2(z-X)/\lambda}=\cos\theta(1+e^{\mp 2(z-X)/\lambda})\\
&\cos\theta=\frac{1-e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}{1+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}\\
&\phantom{\cos\theta}=\frac{e^{\pm(z-X)/\lambda}-e^{\mp(z-X)/\lambda}}{e^{\pm(z-X)/\lambda}+e^{\mp(z-X)/\lambda}}\\
&\phantom{\cos\theta}=\pm\tanh \frac{z-X}{\lambda}\\
);

境界条件により &math(z=-\infty); で &math(\cos\theta=-1);、&math(z=+\infty); で &math(\cos\theta=1); また、&math(\sin\theta\ge 0); であるから、

(4.43)

&math(&\cos\theta=\tanh \frac{z+X}{\lambda}\\);

&math(
\sin\theta&=\sqrt{1-\cos^2\theta}\\
&=\sqrt{1-\tanh^2 \frac{z+X}{\lambda}}\\
&=\sqrt{1-\left\{\frac{e^{\pm(z-X)/\lambda}-e^{\mp(z-X)/\lambda}}{e^{\pm(z-X)/\lambda}+e^{\mp(z-X)/\lambda}}\right\}^2}\\
&=\sqrt{1-\frac{e^{\pm 2(z-X)/\lambda}-2+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}
{e^{\pm 2(z-X)/\lambda}+2+e^{\mp 2(z-X)/\lambda}}}\\
&=\sqrt{\frac{4}{\{2\cosh{\pm (z-X)/\lambda\}^2}}}\\
&=\frac{1}{\cosh\frac{z-X}{\lambda}}\\
);

&math(\phi=\phi_0);

が求める解となる。

この形より、&math(X); が磁壁の位置、&math(\lambda); が磁壁の厚さを表していることがわかる。

図4.4 は &math(\phi_0); が &math(x); 軸を指している場合、すなわち &math(\phi_0=2n\pi); の場合を表しているが、およそ &math(X-\lambda<z<X+\lambda); の範囲で &math(n_z); の極性が入れ替わっていることを見て取れる。

&math(\lambda); の値は、パーマロイで 100 nm かそれ以下、CoPt などの薄膜で、面に垂直に強い磁化容易軸を持つ場合には 12 nm 程度とされている。&math(\lambda=\sqrt{J/K}); より、&math(K); が大きいほど磁壁は薄くなる。これは、容易軸からずれた領域を薄くする効果として理解できる。逆に &math(J); が相対的に大きい場合には、スピンの空間的な変化が緩やかになるように働くため、磁壁が厚くなる。

通常の強磁性金属では、

&math(J/(a^2k_B)\sim\mathrm{1000\,K});

&math(K/k_B\lesssim\mathrm{0.1\,K});

より、磁壁は 10 ~ 100 nm 程度となる。

有機磁性体では &math(J); が小さいために磁壁が格子間隔程度となることが多い。

-スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と平行なのが N&eacute;el 磁壁
-スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と垂直なのが Bloch 磁壁

で、

-スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と平行な N&eacute;el 磁壁 = 厚い
-スピン容易軸がスピン変化方向(z軸)と垂直な Bloch 磁壁 = 薄い

という傾向がある。

* 4-6 磁気渦 [#c8a8b771]

z軸を磁気困難軸とする強磁性体を考える。

&math(
H_V&= \int\frac{d^3r}{a^3}\ \left(\frac{J}{2}S^2((\nabla\theta)^2+\sin^2\theta(\nabla\phi)^2)+\frac{K_\perp}{2}S^2\cos^2\theta\right)\\
);

この時間に依らない定常解を探すなら、(4.37), (4.38) を少し変更して、

(4.45)

&math(
\frac{KS}{\hbar}\left\{\lambda_\perp{}^2\left(-\nabla^2\theta+\frac{1}{2}\sin 2\theta(\nabla\phi)^2\right)-\frac{1}{2}\sin 2\theta\right\}=-\sin\theta\dot\phi-\alpha \dot\theta=0
);

&math(
-\lambda_\perp{}^2\frac{KS}{\hbar}\frac{1}{\sin\theta}\red{\bm\nabla\cdot}\,(\sin^2\theta\red{\bm\nabla}\phi)=\dot\theta-\alpha \sin\theta\dot\phi=0
);

となる。ここでの長さスケールは、

&math(
\lambda_\perp\equiv\sqrt{\frac{J}{K_\perp}}
);

である。

原点対称となる2次元解の、&math(r=\sqrt{x^2+y^2}\gg \lambda_\perp); の極限での解を考える。

原点から遠い部分でスピンは最も安定な「面内方向」にあるとして、

(4.47右)

&math(\theta=\frac{\pi}{2});

を仮定すれば、&math(\sin 2\theta=0); より (4.45) の第1式、第2式とも

(4.47左)

&math(
\nabla^2\phi=0
);

が条件となる。円筒座標系 &math(r=\sqrt{x^2+y^2});, &math(\varphi=\tan^{-1}\frac{y}{x}); では、

&math(
\nabla^2=\Delta=\frac{1}{r}\frac{\PD}{\PD r}\left(r\frac{\PD}{\PD r}\right)+\frac{1}{r^2}\frac{\PD^2}{\PD\varphi^2}+\frac{\PD^2}{\PD z^2}
);

であるから、

&math(
\phi=\varphi+\varphi_0=\tan^{-1}\frac{y}{x}+\varphi_0
);

の形は原点対称 &math(\frac{\PD}{\PD z}\phi=0);, &math(\phi(x,y,z)=-\phi(-x,-y,z)); 
な解を与える。

&math(
\nabla^2\phi&=\frac{1}{r}\frac{\PD}{\PD r}\left(r\frac{\PD}{\PD r}(\varphi+\varphi_0)\right)+\frac{1}{r^2}\frac{\PD^2}{\PD\varphi^2}(\varphi+\varphi_0)+\frac{\PD^2}{\PD z^2}(\varphi+\varphi_0)\\
&=0+0+0=0
);

この解は原点から見た座標点への角度 &math(\varphi); と、スピンの方向 &math(\phi); 
が定数を除いて一致した物となっている。

この解は磁気渦と呼ばれる。

強磁性円盤等では &math(\varphi_0=\pm\frac{\pi}{2}); として、
周で磁化が閉じ、磁極を作らない構造が現れる。

(4.47) のより一般的な解として、整数パラメータである渦度(vorticity) &math(q); 
の自由度を与えることができる。

&math(
\phi=q\varphi+\varphi_0=q\tan^{-1}\frac{y}{x}+\varphi_0
);

この解が (4.47) を満たすことは容易に確かめられる。この解は
原点から見た座標点への角度 &math(\varphi); が一回転する間に、
スピンの方向が &math(q); 回転する解を与える。

その他の自由度として分極 &math(p); があり、
この自由度は渦の中心での局在スピンの向きを与える。

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