復習:連立方程式と逆行列 のバックアップの現在との差分(No.4)
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[[線形代数II]] * 内容 [#eef5aa60] &katex(); - 連立一次方程式 (&math(A\bm x=\bm b);) は次の3つのケースに分類できる -- 解なし -- ただ1つの解を持つ -- 1つ以上のパラメータを用いて表される無数の解を持つ - 連立一次方程式 (&math(A\bm x=\bm b);) の分類 -- 解なし -- ただ1つの解 -- パラメータを用いて表される無数の解 - 掃き出し法 - 掃き出し法を使うとこれらの3つの分類のどれになるかを簡単に見分けられる -- 解なし~ 0 = 1 の行が現れる -- ただ1つの解~ 係数部分が単位行列になる( 0 = 0 となる行があってもよい) -- パラメータを用いて表される無数の解 --- 解に含まれるパラメータの数 = 掃き出せなかった変数の数 -- ただ1つの解を持つ~ --- すべての列を掃き出せる -- 1つ以上のパラメータを用いて表される無数の解を持つ --- 掃き出せなかった列の数が解に含まれるパラメータの数となる --- パラメータの数は係数行列のみにより決まる(定数項によらない) - 階数(rank)との関係 -- 掃き出せた列の数 = rank -- 解なし~ &math(\rank A<\rank \big(\,A\ \bm b\,\big)); $\mathrm{rank} A<\mathrm{rank} \big(\,A\ \bm b\,\big)$ -- ただ1つの解~ &math(\rank A=(Aの列数)); $\mathrm{rank} A=\text{(Aの列数)}$ -- パラメータを用いて表される無数の解~ &math((パラメータ数)=(Aの列数)-\rank A); $\text{(パラメータ数)}=\text{(Aの列数)}-\mathrm{rank} A$ - 逆行列の求め方 * 演習 [#h06d6faf] (1) (1) 次の連立方程式について、 次の連立方程式について、 &math( $$ \begin{cases} ax+by=c\\ dx+ey=f \end{cases} ); $$ (a) ただ1つの解を持つような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~ (b) 複数の解を持つような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~ (c) 1つも解が存在しないような &math(a,b,c,d,e,f); を1つ答えよ~ (a) ただ1つの解を持つように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~ (b) 複数の解を持つように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~ (c) 1つも解が存在しないように $a,b,c,d,e,f$ を定めよ~ (2) (2) 次の連立方程式を掃き出し法(ガウスの消去法)を用いて解け。 次の連立方程式を、掃き出し法を用いて解け。 (a) &math( $$ \begin{cases} 2x+4y-2z=6\\ x-y+3z=2 \end{cases}\\ ); \end{cases} $$ (3) 連立方程式 &math(A\bm x=\bm b); の一般解に任意パラメータが含まれるとき、 パラメータの数は &math((Aの列数)-\rank A); に等しいことを説明せよ。 (3) 連立方程式 $A\bm x=\bm b$ の一般解に任意パラメータが含まれるとき、 パラメータの数は $\text{(Aの列数)}-\mathrm{rank}\, A$ に等しいことを説明せよ。 (4) 次の行列の逆行列を求めよ。 &math(A=\begin{pmatrix} $A=\begin{pmatrix} 3&2&3\\ 2&1&2\\ 3&2&2 \end{pmatrix}); \end{pmatrix}$ * 解答 [#zcc467ae] (1)-(a) ** (1) [#v67506a5] 変数と同じ数の式が与えられていることから係数行列は正方行列となり、 規則性無く係数を選べば多くの場合正則な行列が得られ、解は1つに定まる。 適当に係数を選べばほとんどの場合に解は1つに定まる。 (b) や (c) のようになるのは特殊な場合である(係数行列が非正則)。 (b) や (c) のようになるのは例外的である(係数行列が非正則になる)。 分かりやすい形を答えるのであれば、 例えば &math(a=1,\ b=0,\ c=1,\ d=0,\ e=1,\ f=2); とすれば、 *** (a) [#u95a659e] &math( 例えば $a=1,\ b=0,\ c=1,\ d=0,\ e=1,\ f=2$ とすれば、 $ \begin{cases} x+0y=1\\ 0x+y=2 \end{cases} ); $ であるから、明らかに &math(x=1,\ y=2); だけが解となる。 であるから、明らかに $x=1,\ y=2$ だけが解となる。 (1)-(b) *** (b) [#afa26130] 2つの式が独立な条件になっていないとき、解は無数に存在する。 たとえば、&math(a=b=c=d=e=f=1); とすれば、 たとえば、$a=b=c=d=e=f=1$ とすれば、 &math( $ \begin{cases} x+y=1\\ x+y=1 \end{cases} ); $ であるから、実質的には2つの変数に対して1つの条件式しか与えられていないのと同じことになる。 これは2つの変数に対して1つの条件式しか与えられていないのと同じことになる。 &math(y=s); と置けば、任意のパラメータ &math(s); に対して &math(\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=s\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix}+ \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}); が解となることが分かる。 $y=s$ と置けば、任意のパラメータ $s$ に対して $\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=s\begin{pmatrix}-1\\1\end{pmatrix}+ \begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix}$ が解となる。 あるいは、&math(a=b=c=d=e=f=0); と置けば、実質的には条件式は何もないことになり、 任意の &math(x,y); が方程式の解となる。 あるいは、$a=b=c=d=e=f=0$ と置けば、実質的には条件式は何もないことになり、 任意の $x,y$ が方程式の解となる。 (1)-(c) *** (c) [#sbee4af8] 絶対に成り立たない方程式を作ればいいから、 例えば &math(a=b=0,\ c=1); と置けば、 例えば $a=b=0,\ c=1$ と置けば、 &math( $ \begin{cases} 0x+0y=1\\ dx+ey=f \end{cases} ); $ となって、&math(d,e,f); によらず第1式を満たす &math(x,y); は存在しない。 すなわち、解なし、である。 となって、$d,e,f$ によらず第1式すなわち $\ 0=1\ $ を満たす $x,y$ は存在しない。 解なし、である。 あるいは、&math(a=b=c=d=e=1,\ f=2); と置けば、 あるいは、$a=b=c=d=e=1,\ f=2$ と置けば、 &math( $ \begin{cases} x+y=1\\ x+y=2 \end{cases} ); $ となって、やはりこれらを同時に満たす &math(x,y); は存在しない。 となって、やはりこれらを同時に満たす $x,y$ は存在しない。 (2)-(a) ** (2) [#eeb5d3a7] 拡大係数行列に次に与える「行に対する基本変形」を適用し、 左から順に「掃き出し」を行うことにより、最終的に「階段行列」の形にする。 拡大係数行列に「行に対する基本変形」を適用し掃き出しを行うことで、 最終的に「[[階段行列>線形代数I/行列の階数#h48fd710]]」の形にする。 行に対する基本変形: [[行に対する基本変形>線形代数I/行列の階数#h8a08c91]] とは以下の3つの操作のことである。 - ある行に他の行の定数倍を加える - ある行に定数をかける - 2つの行を入れ替える &math( この変形は行列の表す条件式を同値に保つ。 この授業では条件式としての同値性を表すのに記号 $\sim$ を用いる。 行列として等しいわけではないため $=$ は使えないことに注意せよ。 $ \begin{pmatrix} 2&4&-2&6\\ 1&-1&5&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 1&-1&5&0 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 0&-3&6&-3 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&2&-1&3\\ 0&1&-2&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&3&1\\ 0&1&-2&1 \end{pmatrix} ); $ より、与式は &math( $ \begin{cases} x+3z=1\\ y-2z=1 \end{cases}); \end{cases}$ と同値である。 掃き出しの行えなかった列に対応する変数 &math(z); をパラメータに置いて、 &math(z=s); とすれば、求める解は任意のパラメータ &math(s); に対して 掃き出しの行えなかった列があれば、___その列に対応する変数をパラメータに置けば___ 答えが求まる。 &math( ここでは $z=s$ とすれば求める解は任意パラメータ $s$ を用いて $ \begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix}= s\begin{pmatrix}-3\\2\\1\end{pmatrix}+ \begin{pmatrix}1\\1\\0\end{pmatrix} ); $ と表せることが分かる。 このように、&math(A\bm x=\bm b); の形に表せる連立方程式の解が 任意パラメータ &math(c_1,c_2,\dots,c_r); を用いて &math(\bm x=c_1\bm x_1+c_2\bm x_2+\dots+c_r\bm x_r+\bm x_0); の形に表せるとき、 このように $A\bm x=\bm b$ の形に表せる連立方程式の解が任意パラメータ $c_1,c_2,\dots,c_r$ を用いて~ $\bm x=\bm x_0+c_1\bm x_1+c_2\bm x_2+\dots+c_r\bm x_r$ の形に表せるとき、 &math(\begin{cases} $$\begin{cases} A\bm x_0=\bm b\\ A\bm x_1=\bm 0\\ A\bm x_2=\bm 0\\ \hspace{1cm}\vdots\\ A\bm x_r=\bm 0\\ \end{cases}); \end{cases}$$ であり、この一般解が非斉次方程式 (&math(A\bm x=\bm b);) の特殊解 &math(\bm x_0); に、 対応する斉次方程式 (&math(A\bm x=\bm 0);) の解 &math(\bm x_1,\bm x_2,\dots); を加えた形になっていることが分かる。 であり、 この一般解は非斉次方程式 ($A\bm x=\bm b$) の特殊解 $\bm x_0$ に、~ 斉次方程式 ($A\bm x=\bm 0$) の解 $\bm x_1,\bm x_2,\dots$ を加えた形になっていることが分かる。 線形代数で学ぶ「掃き出し法」は、「効率の良い問題の解き方」を学ぶためのものではなく、 どんな問題もこの方法で解けることと、解いた結果がどのような形になるかを分類できること、 を理解するのが重要なので、「別にこの方法でも解けるし、」などと考えず、 しっかり手順を身に着ける必要がある。 (3) 「掃き出しの行えなかった列の数」が「任意パラメータの数」となることも理解しておくように。 &math(\rank A); は掃き出し後の階段行列の行数として定義されるが、 ** (3) [#w07b762d] [[$\mathrm{rank}\, A$ は掃き出し後の階段行列の行数として定義されるが>線形代数I/行列の階数#h48fd710]]、 これは「掃き出しが行えた列の数」に等しい。 一方、上でも見た通り、一般解に含まれる任意パラメータの個数は掃き出しの行えなかった列の数に等しいから、&math((Aの列数)-\rank A); と表せることになる。 一方、(上でも見た通り)一般解に含まれる任意パラメータの個数は掃き出しの行えなかった列の数に等しい。 &math((\rank A\le (Aの列数)); であるから、&math((Aの列数)-\rank A<0); となることはない。 したがって、任意パラメータの個数は $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A$ と表せることになる。 &math((Aの列数)-\rank A=0); のとき、&math(0=1); のような行が現れれば解なし、 そのような行が現れない場合、つまり階段行列が正方行列になる場合や、 それに加えて &math(0=0); の行がいくつか現れる場合には解が1つに定まる。 以上が解答例。さらに解説を加えると、 (4) 掃き出せた回数 $\mathrm{rank}\, A$ が $A$ の列数を超えることはないから $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A\ge 0$ である。 &math(A); と単位行列 &math(E); とを並べて掃き出し、 左半分が単位行列になったとき、右に残ったのが &math(A^{-1}); である。 途中で掃き出しができなくなれば、&math(A); は非正則(逆行列を持たない)。 $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A>0$ なら一般解はパラメータを含み、無数の解を見つけられる。 &math( $(Aの列数)-\mathrm{rank}\, A=0$ はすべての列が掃き出せたことを表す。掃き出せた回数が $A$ の行数を超えることもないので、$A$ はこのとき正方行列か、あるいは縦長の行列である。 $A$ が正方行列なら掃き出し後は単位行列になり、解は1つに定まる。 $A$ が縦長のとき、掃き出し後にゼロのみを含む行が現れる。 $$(A\ \bm b)\sim\begin{pmatrix} 1&0&0&0&*\\ 0&1&0&0&*\\ 0&0&1&0&*\\ 0&0&0&1&*\\ 0&0&0&0&?\\ 0&0&0&0&?\\\end{pmatrix}\begin{matrix}\\\\ \\ \\\leftarrow\text{ここ}\\\leftarrow\text{ここ}\end{matrix}$$ その行の定数部分(上の $?$ の部分)がゼロでなければ $0=1$ のような条件が現れ解なしとなる。 定数部分もゼロなら $0=0$ であるから実質的には何もないのと同じであり、$A$ が正方行列の時と同様に解は1つに定まる。 ** (4) [#s805569f] $A$ と単位行列 $E$ とを並べて掃き出し、 左半分が単位行列になったとき、右に残ったのが $A^{-1}$ である。 詳しくは [[逆行列の求め方>線形代数I/連立一次方程式#hb26fec8]] を参照。 途中で掃き出しができなくなれば、$A$ は非正則(逆行列を持たない)。 $$ \begin{aligned} &\Big(\,A\ E\,\Big)= \begin{pmatrix} 3&2&3&1&0&0\\ 2&1&2&0&1&0\\ 3&2&2&0&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 2&1&2&0&1&0\\ 3&2&2&0&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 0&-1&0&-2&3&0\\ 0&-1&-1&-3&3&1 \end{pmatrix}\sim\\ &\begin{pmatrix} 1&1&1&1&-1&0\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&-1&-1&-3&3&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&1&-1&2&0\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&0&-1&-1&0&1 \end{pmatrix}\sim \begin{pmatrix} 1&0&0&-2&2&1\\ 0&1&0&2&-3&0\\ 0&0&1&1&0&-1 \end{pmatrix}=\Big(\,E\ A^{-1}\,\Big) ); \end{aligned} $$ したがって、 &math( $ A^{-1}=\begin{pmatrix} -2&2&1\\ {}-2&2&1\\ 2&-3&0\\ 1&0&-1 \end{pmatrix} ); $ * コメント・質問 [#od7231f8] #article_kcaptcha
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